平成26年度 学術講演記念座談会(準会員からの質問 編)

2015-04-13

第33回技修会学術講演会にて講演して頂いた中沢勇太先生(MDLキャステティックアーツ)に特別座談会として様々なお話を伺いました.学術講演会では拝聴できなかった話など,ココだけの情報を大ボリュームでお届けします.

 


 

高山「ここからは現在,歯科技工研修科基礎課程有床義歯専攻に在学中の鈴木和也さん(平成27年3月修了)に参加して頂きます.では鈴木さん,中沢さん何か質問ありますか?」

鈴木「よろしくお願いします.私は有床義歯を専攻している上で,修了後の就職先に悩んでいます.分業制を敷く大型ラボから院内ラボまで様々な職場がある中で,それぞれのメリットやデメリットを知りたいです.」

高山「技工業界は職場によって仕事環境や働き方も大きく違っていますからね.」

中沢「就職先についてはとても難しいですよね.私の友人にも大型ラボに勤めている人,企業内の技工所に勤めている人,または院内に勤務している人などがいますが,職場の違いはあっても,はっきりとした良し悪しはないように感じます.」

高山「…と言いますと?」

中沢「つまり自分がどういう技工をしていきたいかっていう理想みたいなものがあった上で,メリットやデメリットが出てくると思います.10年後にどのような技工士になりたいのか,どんな仕事をしていたいのかをまずはっきりと決めてから職場見学に行くと良いと思います.」

高山「鈴木さんは将来どんな仕事のスタイルを目指していますか?」

鈴木「私は将来,歯科医の兄と一緒に開業して院内ラボをやりたいと考えています.歯科医と患者さんとの緊密なコミュニケーションの中でこそ,任侠な仕事ができると思い描いています.」

高山「ほう!任侠な仕事ですか?」(笑)

鈴木「私の考える任侠な仕事とはテキトー,インチキ,右から左以上の三つが感じられない心からの仕事です.古き良きといいましょうか(笑)折り合いをつける場所はあっても,その人にとってのベストを少人数チームで目指せる仕事が歯科医療のベストだと考えます.」

高山「なかなか,熱いハートのある若者ですね(笑).中沢先生は講演の内容からも察するに,現在のラボでなかなか任侠なお仕事をされていると想像しましたが(笑),以前の職場で身につけられたスタイルなのでしょうか?」

中沢「私のいた職場では少人数で一つの仕事は責任を持って最後まで仕上げるタイプの技工所でした.当然最後には社長のチェックを通らなければいけないのでチェックを通るだけの技工物を自分一人で作っていくのです.先輩に助けてもらうこともありましたが,各々が別の仕事を持っている状況ですので,やはり責任感を持って仕上げる必要がありましたね.」

高山「技工所ですと納品前に社長や上司のチェック体制を敷く形が多いようですね.」

中沢「なかなかチェックが通らなくて最初の頃はどうして良いのかわからなくなりましたね.ただし,いっさい手を抜けない状況で最後まで仕上げるので経験値はものすごく上がるのではないかと思います.師匠や先輩に助けられながら成長していく実感が常にありました.」

高山「技術職なので,高い技術水準の維持(教育)と生産性のバランスが取れた体制ができている職場が理想ですよね.せっかく技工研修科で学んだ手前,技術に理解のあるチームで仕事をすることは任侠な仕事に通じる喜びがあると思いますよ.」(笑)

鈴木「生産効率等の観点から見ると,いきなり院内ラボに就職すると手が早くならない等のネガティブな意見も聞きますが…」

高山「私は院内勤めですが確かにラボ勤めの技工士に比べると生産効率は高くないと思います.院内で長く働き過ぎるとラボへの転職が難しくなるという話はよく聞きます.小規模の医院では採算性の面からも長く働く事が難しいという話もよく聞きます.」

中沢「でも,私が今まで一番羨ましいと思っていたのは院内ラボ でチーム医療が実現できる環境ですよ.これも友人から聞いた話になりますが,突然の義歯修理が一番辛いと言っていました.自分で作業工程を構築できないというのが一番のデメリットではないでしょうか.」

高山「実際,緊急対応はよくありますね.チェアサイドは常に時間との戦いみたいなところがありますので,限られた時間と手段で,万全とは言えない対応を迫られる場面は多々あります.」

中沢「患者さんは待ってくれませんからね,その日に突然の義歯修理とか入ってくると仕事運びが目茶目茶になるそうです.でもやっぱり患者さんの口腔内を直に見学できるのは院内勤めの一番のメリットだと思います.」

高山「そうですね.患者さんに喜んでもらうような場面を直接見られるのも院内勤めのメリットですね.その逆もありますが.」(汗)

中沢「技工士は模型相手でしか基本的には仕事ができませんので,自分の作ったものが生体的にどう機能するのか見られる院内は最も経験値が上がるのではないかと思います.」

高山「技工の仕事とは最終的に一番ゴールに近い位置になりますからね.技工研修科も院内技工にあたると思いますが,大学病院という機関に求められるものと一般の歯科医院で求められるものは,違う部分がある気がします.研修科に在学中はチェアサイドへ足繁く通うと良いと思います.」

鈴木「はい,わかりました.」

中沢「私もよく近所の歯科医院には見学に行かせてもらっていましたが,やっぱり患者さんとも連携が取れると上手くいくケースが多いと思いました.」

高山「中沢先生としては院内勤めがお奨めのようですね.鈴木さんは如何ですか?」

鈴木「やはり将来は歯科医の兄と院内ラボをやりたいと考えています.」

高山「身内と仕事をする難しさみたいなものもあるかもしれませんね.ある意味,家族って最もコミュニケーションの距離が難しい部分があると聞いています.」

鈴木「そうかもしれませんね.」(笑)

高山「後編では中沢先生から見た歯科技工士の様々なワークスタイルについてお聞かせ頂きたいと思います.」

中沢「よろしくお願い致します.」

 

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