4月, 2015年

平成26年度 学術講演記念座談会(様々なワークスタイル 編)

2015-04-27

第33回技修会学術講演会にて講演して頂いた中沢勇太先生(MDLキャステティックアーツ)に特別座談会として様々なお話を伺いました.学術講演会では拝聴できなかった話など,ココだけの情報を大ボリュームでお届けします.

 


 

高山「中沢先生,後半もよろしくお願いいたします.講演会での質疑応答にもありましたが,複雑で特殊な義歯の設計となれば,歯科医師とのコミュニケーションが非常に大切になりますね.」

中沢「ハートクラスプを生み出した時,患者さんに喜んで頂けた喜びはひとしおでした.そういった気持ちが生まれたのは歯科医師とコミュニケーションをとれたことで患者さんとお話できて,その中から一番の要望が何なのかを理解できたからだと思います.」

高山「私も技工士は色々な意味でもっと最前線に出て,コミュニケーションを取る必要があると日々感じています.」

中沢「歯科医療をチームとして行う重要性がもっと一般的になればいいと思っています.」

高山「全くおっしゃる通りだと思います.一般臨床で任侠な仕事(笑)をしてゆくのは様々な事情から大変みたいですね.」

中沢「人にはそれぞれに環境に向き不向きがありますからね.専門的分野ではたくさん勉強してコミュニケーションをとるようにする必要があります.ラボ勤務では後輩を育てる,教えるということも必要になります.友人から聞いた話ですが大型ラボでは色々な地方や学校から人が集まってくるのでどうしても派閥ができてしまい,人間関係が難しいのだそうです.」

高山「院内技工の環境でもありがちです(笑)」

中沢「そういった中でうまくやるというのが大変だと言っていました.大型ラボは福利厚生などの労働条件はしっかりとしているし,時期にもよりますが残業も比較的少ないという印象を受けました.またセミナーなども会社で講師を招いて無料で受講できるので羨ましいなあと思うこともありました.収入に関しても当時の自分よりは安定していると思っていました.」

高山「歯科医院もラボもほとんどが中小企業ですから,経営や運営の安定を課題とするところも多いのではないでしょうか.」

中沢「やっぱり院内勤めで患者さんの口腔内を見学できるのは一番のメリットだと思います.技工士は基本的に模型相手でしか仕事ができませんので,自分の作ったものが生体的にどの様に機能するのかを見ることのできる院内は最も経験値が高いのではないかと思います.」

高山「中沢先生は今も患者さんと接する機会を持ってらっしゃるようですね.」

中沢「私はよく近所の歯科医院に見学に行かせてもらっていましたが,やっぱり患者さんとも連携が取れると上手くいくケースが多いと思います.」

高山「保険主体のラボは如何でしょうか」

中沢「保険のラボというと忙しくて残業時間が長いと思われていますよね.小規模のラボで保険主体となると,かなりの確率で過酷な労働になると思います.技工士の離職率をここまで高めてしまった現状も残念ながらこの辺にあると思います.大型ラボであれば,効率的に行えますし,従業員一人当たりの負担も軽くなり上手く回せているようです.しかし人間工学やパフォーマンスロジックを究極まで追い求めて,少人数で1億円以上の年商を上げている保険ラボもあります.私の父も保険の多い小規模ラボを経営していますが,目を見張るような手さばきで仕事を大量にこなしています.保険の仕事を行う上で必要な技術や理論を追い求めれば保険ラボも十分に戦っていけると思います.ただし,そこにはかなりの熟練が必要かなと思っています.」

高山「様々な工夫が施されたラボには仕事に対する素晴らしい意識の高さが感じられますね.機能的で効率的で清掃性もよくて,生体親和性まで考慮されていて,まるで補綴物のようですね(笑).少人数もしくはソロで経営していくとしたら,どの様なスタイルが望ましいと考えられますか?」

中沢「やはり自費専門のラボが良いのではないかと思います.当然,自費技工は精度や高い技術が求められますし,ドクターサイドの知識もある程度持っていないと話しにさえついていけないです.インプラントオールオン4やロストテクニックと呼ばれているテレスコープなど,勉強や修練を多く必要とする分野が多いと思います.それだけに,仕事の納期も長く取って頂けますし,技工料金も高いです.ハードルは高いけれど,挑戦してみる価値のある分野であると思います.もし自費専門を目指すのであれば,ドクター主催の勉強会に出席したり,研究論文を投稿したりすると,自然な流れで仕事に繫がるのではないかと思っています.」

高山「中沢先生のお話からコミュニケーション力や技工士としてのビジョンをしっかり持つことが大事ということがよく解りました.このお話は若い会員にとって,とても貴重な情報になったのではないかと思います.」

鈴木「私のとりとめのない質問に丁寧に答えて頂き,大変参考になりました.本当にありがとうございました.」

中沢「こちらこそ貴重な経験となりました.ありがとうございました.」

高山「中沢先生の益々のご活躍を期待致します.この度は誠にありがとうございました.」

平成26年度 学術講演記念座談会(準会員からの質問 編)

2015-04-13

第33回技修会学術講演会にて講演して頂いた中沢勇太先生(MDLキャステティックアーツ)に特別座談会として様々なお話を伺いました.学術講演会では拝聴できなかった話など,ココだけの情報を大ボリュームでお届けします.

 


 

高山「ここからは現在,歯科技工研修科基礎課程有床義歯専攻に在学中の鈴木和也さん(平成27年3月修了)に参加して頂きます.では鈴木さん,中沢さん何か質問ありますか?」

鈴木「よろしくお願いします.私は有床義歯を専攻している上で,修了後の就職先に悩んでいます.分業制を敷く大型ラボから院内ラボまで様々な職場がある中で,それぞれのメリットやデメリットを知りたいです.」

高山「技工業界は職場によって仕事環境や働き方も大きく違っていますからね.」

中沢「就職先についてはとても難しいですよね.私の友人にも大型ラボに勤めている人,企業内の技工所に勤めている人,または院内に勤務している人などがいますが,職場の違いはあっても,はっきりとした良し悪しはないように感じます.」

高山「…と言いますと?」

中沢「つまり自分がどういう技工をしていきたいかっていう理想みたいなものがあった上で,メリットやデメリットが出てくると思います.10年後にどのような技工士になりたいのか,どんな仕事をしていたいのかをまずはっきりと決めてから職場見学に行くと良いと思います.」

高山「鈴木さんは将来どんな仕事のスタイルを目指していますか?」

鈴木「私は将来,歯科医の兄と一緒に開業して院内ラボをやりたいと考えています.歯科医と患者さんとの緊密なコミュニケーションの中でこそ,任侠な仕事ができると思い描いています.」

高山「ほう!任侠な仕事ですか?」(笑)

鈴木「私の考える任侠な仕事とはテキトー,インチキ,右から左以上の三つが感じられない心からの仕事です.古き良きといいましょうか(笑)折り合いをつける場所はあっても,その人にとってのベストを少人数チームで目指せる仕事が歯科医療のベストだと考えます.」

高山「なかなか,熱いハートのある若者ですね(笑).中沢先生は講演の内容からも察するに,現在のラボでなかなか任侠なお仕事をされていると想像しましたが(笑),以前の職場で身につけられたスタイルなのでしょうか?」

中沢「私のいた職場では少人数で一つの仕事は責任を持って最後まで仕上げるタイプの技工所でした.当然最後には社長のチェックを通らなければいけないのでチェックを通るだけの技工物を自分一人で作っていくのです.先輩に助けてもらうこともありましたが,各々が別の仕事を持っている状況ですので,やはり責任感を持って仕上げる必要がありましたね.」

高山「技工所ですと納品前に社長や上司のチェック体制を敷く形が多いようですね.」

中沢「なかなかチェックが通らなくて最初の頃はどうして良いのかわからなくなりましたね.ただし,いっさい手を抜けない状況で最後まで仕上げるので経験値はものすごく上がるのではないかと思います.師匠や先輩に助けられながら成長していく実感が常にありました.」

高山「技術職なので,高い技術水準の維持(教育)と生産性のバランスが取れた体制ができている職場が理想ですよね.せっかく技工研修科で学んだ手前,技術に理解のあるチームで仕事をすることは任侠な仕事に通じる喜びがあると思いますよ.」(笑)

鈴木「生産効率等の観点から見ると,いきなり院内ラボに就職すると手が早くならない等のネガティブな意見も聞きますが…」

高山「私は院内勤めですが確かにラボ勤めの技工士に比べると生産効率は高くないと思います.院内で長く働き過ぎるとラボへの転職が難しくなるという話はよく聞きます.小規模の医院では採算性の面からも長く働く事が難しいという話もよく聞きます.」

中沢「でも,私が今まで一番羨ましいと思っていたのは院内ラボ でチーム医療が実現できる環境ですよ.これも友人から聞いた話になりますが,突然の義歯修理が一番辛いと言っていました.自分で作業工程を構築できないというのが一番のデメリットではないでしょうか.」

高山「実際,緊急対応はよくありますね.チェアサイドは常に時間との戦いみたいなところがありますので,限られた時間と手段で,万全とは言えない対応を迫られる場面は多々あります.」

中沢「患者さんは待ってくれませんからね,その日に突然の義歯修理とか入ってくると仕事運びが目茶目茶になるそうです.でもやっぱり患者さんの口腔内を直に見学できるのは院内勤めの一番のメリットだと思います.」

高山「そうですね.患者さんに喜んでもらうような場面を直接見られるのも院内勤めのメリットですね.その逆もありますが.」(汗)

中沢「技工士は模型相手でしか基本的には仕事ができませんので,自分の作ったものが生体的にどう機能するのか見られる院内は最も経験値が上がるのではないかと思います.」

高山「技工の仕事とは最終的に一番ゴールに近い位置になりますからね.技工研修科も院内技工にあたると思いますが,大学病院という機関に求められるものと一般の歯科医院で求められるものは,違う部分がある気がします.研修科に在学中はチェアサイドへ足繁く通うと良いと思います.」

鈴木「はい,わかりました.」

中沢「私もよく近所の歯科医院には見学に行かせてもらっていましたが,やっぱり患者さんとも連携が取れると上手くいくケースが多いと思いました.」

高山「中沢先生としては院内勤めがお奨めのようですね.鈴木さんは如何ですか?」

鈴木「やはり将来は歯科医の兄と院内ラボをやりたいと考えています.」

高山「身内と仕事をする難しさみたいなものもあるかもしれませんね.ある意味,家族って最もコミュニケーションの距離が難しい部分があると聞いています.」

鈴木「そうかもしれませんね.」(笑)

高山「後編では中沢先生から見た歯科技工士の様々なワークスタイルについてお聞かせ頂きたいと思います.」

中沢「よろしくお願い致します.」

 

平成26年度技修会レポート(基礎課程42期 森千絵さん)

2015-04-10

 平成26年度技修会レポート

毎年総会に参加して頂いた会員の中からランダムで,総会の感想や近況報告をインタビュー形式でご紹介する企画です.

 


 

高山「森さんは技修会総会には準会員としての出席は経験していますが,正会員としての参加は初めてでしたね.インタビューさせて頂きますので,どうぞよろしくお願いします.」

森「こちらこそよろしくお願いします.」

高山「最初に自己紹介をお願いします.」

森「森 千絵です.基礎課程の冠橋義歯専攻の42期生です.専門学校に入学する前は,事務の仕事に8年ほど就いていました.向いていない訳ではなかったのですが,今一つやりがいが感じられず,インターネットで歯科技工士という資格を見つけて転向を決意しました.」

高山「卒後教育として歯科技工研修科に進学された動機は?」

 

森「新東京歯科技工士専門学校を卒業したら,すぐに働こうと思っていましたが,非常勤講師の先生の勧めで歯科技工研修科に進学を目指しました.歯型彫刻に力を入れており,数々のコンテストで賞を獲得していることが一番の魅力でした.」

高山「歯科技工研修科の彫刻技術は非常に高い評価を受けていますね.」

森「自分もコンテストで賞を取りたいと気持ちを抱いていましたが,夢は叶いませんでした.」

高山「総会における新会員紹介では,研修生の時に製作した技工物をスライドに映す自己紹介して頂く企画を行っていますが,森さんの発表した技工物はどのような技工物だったのでしょうか?」

森「2点選びました.上顎左右6の陶材焼付冠は支台歯の形成が理想的で,任意に与える歯冠形態の自由度が比較的大きいケースだったので,こだわって作りました.もう一点は下顎左側4〜7のBRのケースで,FBIテクニックを用いた症例です.セット時に無調整だったので,自分でも感激しました.」

)))写真(((

高山「FBIテクニックは鶴見大学以外ではなかなか携われない技工ですね.貴重な経験だったのではないでしょうか?」

森「FBIテクニックをいきなり臨床でというのは確かに難しいと思います.ドクターの技術修得も必要と思います.素晴らしい技術なので,もっと広められたらとも思います.院内ラボなので,出来ない環境ではないと思います.」

高山「研修生の時の思い出深いエピソードなどがあればお聞かせ下さい.」

森「悲しい思い出はすぐに浮かぶのですが,技工ではないのですが謝恩会の準備は本当に大変でした.レクリエーション担当になり,仲間が盛り上げてくれて助かりました.」(笑)

高山「謝恩会も研修科時代の大きなイベントでしたね.森さんは神奈川県平塚市の歯科医院に就職されたそうですが,職場での技工は如何でしょうか?」

森「主に印象の石膏注ぎ,コアやテックを製作しています.時々ですが自費の仕事も担当させて頂いて,少しプレッシャーですが,チャンスを活かして技術を高めていけたらと考えています.」

高山「歯科医師とコミュニケーションはどうですか?」

森「現在の職場では歯科医師と良いコミュニケーションが取れていると思います.セット時の見学も出来るのでとても良い環境だと思います.」

高山「今回の学術講演は如何でしたか?例年の傾向では義歯をテーマにした学術講演は少なかったのですが,冠橋義歯を専攻された森さんにとって金属床義歯の内容は専門性が高く,少し難しかったかも知れませんね.」

森「今回の講演内容は金属床義歯だったので,上司や院長に参加して良いかどうか相談しました.何かしらのヒントを得ることが出来るからと,勤務日にもかかわらず参加させてくれました.感謝いたします.」

高山「理解ある職場に勤めらたようで,やりがいもバッチリですね.講演では何か得られたものはありましたか?」

森「中沢先生は適合試験を何度も行って,適合精度を向上させているお話は非常に感銘を受けました.サベイドクラウンを製作する時もあるので,義歯の知識は大変参考になりました.」

高山「分業化が進んでいる時代ですが,統合された知識の上で役割をこなしてゆきたいものですね.」

森「そうですね,チェアーサイドの知識も取り入れながら,患者さんにとってのベストを目指したいと思います.簡単ではないですし,色々問題もありますが頑張りたいと思います.」

高山「懇親会の方は如何でしたか?」

森「とても楽しかったです!ちょっと酔ってしまい,フラフラしてしまいました.」(笑)

高山「お酒はお好きですか?」(笑)

森「はい,お酒は大好きです!酔っ払って失敗することが結構あるので,決して強くはないです.」(笑)

高山「女性技工士が増えているように感じていましたが,森さんの職場は如何ですか?」

森「技工士は私を含めて4名ですが,女性は私だけなので女性技工士の労働環境などは同窓会や講演会で情報を得るしかないです.」

高山「総会・懇親会の参加者は少しずつ増えているようですが,若い方が多いのが実情です.できれば幅広い年齢層の同窓生に参加して頂き,情報を共有できる場にしたいですね.来年以降もぜひ参加して頂けたらと思います.」

森「これからも出来る限り同窓会に参加したいと思っています!」

高山「理事会としても同窓会をより盛り上げる企画を立てて行きたいと思います.今後ともよろしくお願いします.インタビューありがとうございました.」

森「ありがとうございました.」

 

 

平成26年度 学術講演記念座談会(登竜門チャレンジの思い出 編)

2015-04-10

第33回技修会学術講演会にて講演して頂いた中沢勇太先生(MDLキャステティックアーツ)に特別座談会として様々なお話を伺いました.学術講演会では拝聴できなかったなど,ココだけの情報を大ボリュームでお届けします.

  


 

高山「第33回技修会学術講演会での貴重な講演,誠にありがとうございました.金属床技工を目指す技工士や自分の技工を世にアピールしたいと願う技工士にとって,第7回歯科技工登竜門テクニカルコンテスト(モリタ歯科技工フォーラム2013:スペシャルイベント)にて優秀賞を受賞された中沢先生のお仕事やお考えに興味深々といったところであったかと思います.今回の学術レポート(技修会HP)ではいつもと視点を変え,中沢先生にいろいろ突っ込んだお話を直接お聞きする企画を立てさせて頂きました.どうぞよろしくお願い致します.」

中沢「先日は大変貴重な講演の場を与えて頂きありがとうございました.後半ちょっと急ぎ過ぎてしまい,わかりにくいところもあったと思いますが,とても良い経験になりました.」

高山「座談会前半は,同じ職場でお仕事さことがある原田直彦さん(技工研修科教員)も交えて,雑談も含めたお話を頂ければと思います.」

原田「よろしくお願いします.」

高山「中沢先生と原田さんはどのような職場でご一緒されていたのでしょうか?」

原田「私が千葉県松戸市にある技工所に入社してからの付き合いです.中沢先生は3年先輩になります.私は5年間勤めた後,鶴見大学に就職しましたが,中沢先生は8年間ほど勤務していたと思います.」

高山「金属床義歯専門の歯科技工所だったのでしょうか?」

原田「義歯がメインです.ポーセレン以外の設備はすべて整っていました.中沢さんは,何でもこなしてしまうというイメージです.当時から,東京都技工士会のコンテストでも受賞していましたし,とにかく輝いていました.」

中沢「原田君は僕が3年目を迎えるときに入社してきました.真面目で仕事は丁寧できっちりこなすので,当時はすぐに追い抜かれちゃうなと焦ったりもしました.あれから4年,ずいぶん教員らしくなりましたね.総会後の打ち上げでも学生優先で動く原田君には成長を感じました.原田君が辞める時,丁度東日本大震災が起きてしまい,こちらは大変でしたよ.」

高山「震災の時は千葉も結構揺れて大変だったようですね.」

中沢「あの時はラボが崩壊するんじゃないかってくらい揺れて,仕事もしばらく麻痺してましたよね.今,思い出しても恐ろしい.」

高山「ご無事で何よりです.次に中沢先生には登竜門テクニカルコンテスト応募の動機やその時の様子についてお話頂けますでしょうか?」

中沢「学生の頃,登竜門に出展されていた技工物を見て,いつかこういうものが作りたい,いつか登竜門コンテストに出たいと思ったのがそもそものきっかけでした.4年目あたりから仕事に余裕時間がもてるようになり,コンテストに出品する技工物が作れるようになってきました.仕事に関係ないものを作り始めたのもこの頃からでした.」

高山「技修会の講演で見せて頂いたミニチュアの作品には皆さん驚いてましたね(笑)楽しんでものづくりされていらっしゃるのが伝わってきて,興味深く拝見させて頂きました.」

原田「当時,中沢先生はその日の仕事にメドをつけると,こそこそとパーツづくりしていましたね.」(笑)

高山「いやぁ何と無くわかりますねー.技工の道具や材料があると妙に創造力がかき立てられるというか…」(笑) 

原田「咬合器やミニチュア義歯は,症例のワックスパターンと繋げて,チタンやコバルトクロムで一緒に鋳造していましたね.臨床とどっちらがメインかわからないぐらい楽しんでました.」

 一同:(笑)

中沢「自分の実力がどの程度ついたのか,何か形として残したい,そう思い始めました.ついに登竜門へ挑戦しようということになったのですが,応募要項の『モリタ社製の材料を使う』のを見てびっくりしました.使用材料でのハードルがあったのです.」

高山「コンテストには主催企業の特定材料を使用しなければならないという規定があったのですね.」

中沢「最初はとりあえず金属床義歯の臨床例でプレゼンを作り応募しましたが,最終選考落選してしまいました.」

高山「そうでしたか…残念でしたね.」

中沢「その年は優秀賞該当者なしと,登竜門の高さを改めて認識しました.昔から負けず嫌いの僕はどうしても悔しくて,もう一度だけと思い再トライしました.やはり義歯だけではインパクトが足りないのかと思い,試行錯誤の末,エステニアをクラスプに築盛するハートクラスプを生み出しプレゼンに臨むことにしました.臨床の結果も良かったことから,上手くプレゼンがまとまり,登竜門優秀賞を頂くことができました.」

高山「そのハートクラスプについて伺ってよろしいでしょうか?」

中沢「実際に患者さんにお見せしたとき,ハート型でかわいいというコメントを頂いたことでハートクラスプって呼ぶことにしたんです.」

高山「弾力性を期待するクラスプにハイブリッドセラミックの前装となると剥離が心配になりますが?」

中沢「そうなんです.実際には臨床に応用するまでにサンプル模型を作り,試作品で15000手動で着脱して剥離テストを行いました.」

高山「それは凄いですね.」(驚)

中沢「剥離しにくい設計としてIバーの稼働領域を補強して限定したり,アンダーカット接触領域を調整したりと試行錯誤した甲斐もあり今のところ剥離はしていないそうです.」

高山「技工に対する中沢先生の熱い情熱がハートクラスプの独創性を開き,登竜門コンテストの結果に繋がったのですね.」

中沢「ハートクラスプが実際に受賞の決め手になったのかどうかはわからないですが.」(笑)

高山「受賞後は環境の変化などはありましたか?」

中沢「登竜門挑戦によって,今までやってきた仕事を一つずつ丁寧に振り返ることができ,よりきめ細やかな仕事ができるようになったのではないかと思います.また写真の撮り方やプレゼンの作り方も勉強する機会となり,普段ではできない経験をさせて頂きました.」

高山「講演をする機会も増えたのではないかと思いますが,今迄で思い出深い経験はありましたか?」

中沢「やはり最初のモリタの技工フォーラムでの発表が思い出深いです.というのも登竜門優秀賞を取ると,セットでついてくるのがこの技工フォーラムでの受賞者発表です.僕の場合はエステニアをクラスプに盛るという行為が,まだ臨床的にグレーなのではないかということで,プレゼンを最初から作り直すことになりました.モリタ社での発表の練習会では直前までダメだしの嵐で,スタッフの方には大変迷惑をおかけしてしまいました.予定よりも多くの練習会を設けて頂き,夜遅くまで練習を見守ってくれました.」

高山「そんな綿密なプレゼンのリハーサルがあったとは驚きですね.」

中沢「今でもあの日々は色濃く記憶に残っています.それだけに技工フォーラムで発表が終わった時は涙がでそうなくらい嬉しかったです.」

高山「自らの作品を世に送り出し評価を受けるという事はこういうことなのですね.」

中沢「その後も各方面から講演をさせて頂く機会を何度か頂き,自分の発表を色々な方に聞いて頂くことができて,とても嬉しく思っています.その反面,仕事以外にやることが増えてしまい大変なこともある訳ですが,それでも充実した日々を送っています.」

高山「本当にお忙しいところ恐縮です(汗)何だか登竜門コンテストの話題ばかりになってしまい申し訳ないです.さて,中編と後編は準会員からの質問」も含めてお話を伺って参りたいと思います.」

(続く)

第34回技修会総会・学術講演会 平成27年6月20日(土)

2015-04-10

日時:平成27年6月20日(土)

場所:鶴見大学記念館2階

 

1.第34回技修会総会 午後2時~午後2時45分

【議題】

1.平成26年度会務報告

2.新会員紹介

3.審議 1)会計決算報告 2)監査報告 3)その他

4.平成27年度事業案

 

2.学術講演会 午後3時~午後5時30分

 講師: 湯浅 直人 先生 (医療法人社団徳洋会大谷歯科クリニック)

 演題: 「前歯部セラミック修復における陶材築盛の理論と実践」

 *今回の講演会は,手話通訳を準備しております.

本講演会は会員の紹介があれば,会員以外の方の参加が可能です.
参加希望の方は,紹介者の氏名・ご自身のお名前・所属を記入の上,
下記のメールアドレス↓までお送り下さい.尚,参加費は無料です.
 
gishukai.gakuzyutu@gmail.com

 

◆.第34回技修会総会の案内

◆学術講演会抄録・講師プロフィール

 

  3.懇親会 午後6時~午後8時

 場所:養老乃瀧 鶴見区豊岡町8-21  ℡ 045-581-2149

 会費:3,000円(総会受付にてお支払下さい)

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